わかれあげまん
「なあ、それよか聞いたか?哉汰。渡良瀬さんの話」
「…渡良瀬ってVD四回生の?」
雑誌から目を逸らさず、哉汰は言った。
「おお!あの人さ、マスターコース受かったらしいぜ」
「へぇ」
「でよ、渡良瀬さん本人がさっきVD4部屋でぺらぺら自ら暴露ってたらしいんだけどさ」
哉汰の隣に座っていた学生が、彼の方にグッと顔を寄せ意味深に言うには。
「昨夜さ、ヤッたんだってよ!わかれあげまんと“願掛けエッチ”!!」
雑誌に視線をむけたままの哉汰の瞳が僅かに動いた。
が、そこにいる学生たちは誰も気付かなかった。
「なんか昨晩カフェバーに誘ってガバガバ飲まして口説いて、自分の下宿に連れ帰ったってさー、鼻の下伸ばして言ってたって」
「くーっ。わかれあげまんかあ~。ちくしょ~、羨ましいな。俺も一度でいいからあやかりてーわ!」
蓮向かいの学生はたまらないという様子の声音で言い、応接テーブルを拳でガンガンと殴った。