わかれあげまん
「ねえ、もしかしてさ。またあんたのご利益なんじゃないの?」
「ちょ、み、美也子!それ言うの、タブー」
柚が慌てふためいて両手を振り回し、美也子を制したが。
それを聞きくすっと笑った哉汰は柚を見上げた。
「いいよ。柚のご利益ってことにしても。」
「え!?」
「ええ!?」
柚と美也子はぎょっとして同時に哉汰の方を振り向いた。
持ち前の端正な顔に惜しみのない美しい笑みをみなぎらせた哉汰がそこにいて、図らずもきゅんとなる柚の胸。
そしてしれっと彼が放った言葉は。
「ただし。これからは“別れないあげまん”ってことで、よろしくな。柚先輩。」
「…それってさあ、普通にまんま、“あげまん”でよくない?ね、ゆず…」
言いながら隣をみれば、むず痒いような幸福感に我を忘れ、感激に浸っている柚に。
当てられどおしでやってられないわね。
と美也子は苦笑いで溜息を落としたのだった。
(おわり)