わかれあげまん
二人ともなす術なく時間をとめたままだったが、やがてハッと我に帰ったように哉汰が言った。
「あ。悪いけど乗って、駐車場までナビしてくれる?」
「あ、う、うん。じゃ」
アクションのきっかけをもらった柚は慌てて頷き、お邪魔します、とバンのドアを開け、彼の助手席に乗った。
芳香剤の香りだろうか。
すとん、とシートに腰を下ろした時、スプラッシュマリン系の爽やかな香りがふわっと立ち込めた。
「えと、とりあえずその先の信号、左です。」
「了解」
哉汰はすぐにサイドブレーキを落とすと、ハザードランプを消し、アクセルを踏んだ。