わかれあげまん



二人ともなす術なく時間をとめたままだったが、やがてハッと我に帰ったように哉汰が言った。



「あ。悪いけど乗って、駐車場までナビしてくれる?」



「あ、う、うん。じゃ」



アクションのきっかけをもらった柚は慌てて頷き、お邪魔します、とバンのドアを開け、彼の助手席に乗った。



芳香剤の香りだろうか。


すとん、とシートに腰を下ろした時、スプラッシュマリン系の爽やかな香りがふわっと立ち込めた。



「えと、とりあえずその先の信号、左です。」



「了解」


哉汰はすぐにサイドブレーキを落とすと、ハザードランプを消し、アクセルを踏んだ。




< 50 / 383 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop