わかれあげまん
「次のT字路左で、細い路地に入ったらすぐ、右手にパーキングのフェンスが見えますので……」
と柚が説明してる間にも既に車は最後の左折に入り、
「あ、ほんとだ。なんだ。すぐ裏手だったのか」
と笑み混じりに呟く哉汰。
「うちの駐車スペースは最奥の三台分です」
「サンキュ」
哉汰は100坪ほどの小さな月極駐車場の奥に、車庫入れを完了した。
エンジンが切られ、途端静寂に包まれる車内。
「……」
ナビゲートからものの一分足らずのドライブだったため、シートベルトを装着する暇もなく、半分伸ばした状態で柚はまだボーっと哉汰の横顔を眺めたまま、時を止めていた。
「着いたけど?」
哉汰が柚の方を見てそうつぶやき、柚はハッと肩を揺らした。
「あっ、す、すいません」
弾かれたようにシートベルトから手を離すと、ベルトがシュルシュルと巻き取られた。