わかれあげまん
「ええ、まあ」
とあっさり答える哉汰を、柚は仰天して見上げた。
「うちの大学狭いですからね」
「やっぱりなあ~。入ってきた星崎ちゃんの顔見て分かったよ。…実は彼氏だったりして?」
「でっ!!?」
そこだけはいくらとろくさい柚でも、飛び上がって即否定した。
「ち、違いますよ~所長!あたし彼氏いませんし!」
真っ赤になった顔をブンブン振ってると、横で微かにクスリと鼻で笑う声が届いて柚ははっと見上げた。
えっ。
今この人笑った?
しかもちょっと小馬鹿にしたみたいに?
しかし眉根を寄せて見上げた哉汰の顔は、特に笑顔ではなかった。
「はは!そうかー。……じゃ、とにかくこっちで面談しましょう」
所長がそう言って、哉汰を事務室の奥へと案内していった。