わかれあげまん



「あんたの火傷のおかげで、っていうのはちょっと不謹慎だけどな」




やっぱしこの人、お父さんのこといろいろ言われるの、やだったんだ。



運転を続けつつ、悪戯で寂しげな笑みを浮かべた綺麗な横顔を柚はしげしげと見てから、柚はぽつっと言った。


「……家族が優秀だと大変ですよね。色々言われて」


「え?」


「実はあたしも、……姉が超優秀な女弁護士だったりするんですよね。」


「へえ」


「二人姉妹だから、いっつも両親や親戚に比べられちゃって……えへへ」


そんな風に告白してくる柚に、哉汰は訝しげに一瞬だけ、視線を合わせた。


「……」




まさかこの女。


俺が所長さんにあれこれ言われるのを阻止しようとして、わざと火傷を負ったんじゃあるまいな?


いや、いくらなんでもそれはないよな。




と、とんでもない憶測をしてしまった自分の思考回路を慌てて打ち消し、


再び前を向く哉汰。








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