わかれあげまん
「ほんと、すいません。あたしまた……」
「……」
ふ。と今度はかなり明確に、哉汰が口元を緩めたのが分かったけれど、もはや柚が笑われても何の文句も言えない立場になってしまったのは決定的だ。
「にしても、えらく豪快にひっくり返したよな」
「すいません……所長とあなたの話聞いてたら、何か後ろでお湯沸かしてるのすっかり忘れちゃって」
「そんな面白い内容だった?」
「……」
その真逆です、と柚は声にはしなかったが。
実は、所長に父親の事をあれこれ尋ねられた哉汰が何だか苦しそうで、その重い空気に圧倒されてしまったのだ。
しかしモチロンそんなことは言い訳に過ぎない。
全ては気弱でおっちょこちょいな自分のしでかした失敗なのだ。
するとまた、哉汰がクッと鼻にかけるようなあの独特な笑みを漏らし。
「でも、おかげで助かった。所長さんにあれ以上親父の事突っ込まれたくなかったし」
と答えてきたので、柚はびっくりして運転席の方を見た。