わかれあげまん
哉汰は不機嫌に言いながら居心地悪そうにソファへと沈み込み、眉間に縦じわを刻んだまま黙りこくった。
「いいじゃん、教えろよ!なんかあったのか?」
「…」
渡良瀬さんの方を振り向く直前の、あの人の縋るような目。
助けを求めるような…。
「…ちぇ~!出たよ、秘密主義者め!」
視線を何処とも分からない空へ置き、顎に手を置き不満げに黙り続ける哉汰の前に来た仲間の一人が、彼に顔を突きつけ声を改めて言った。
「…何か知らんけど哉汰。星崎さんとは関わらない方がいいぜ?お前みてえな目立つ奴があの人に近づくのはタブーだって。」
「…。」
「お前にはルチアちゃんも居んだしよー。」
ルチアの名をが出た瞬間哉汰がぎろっと睨みつけ、圧倒された彼は若干身体を後ろへ引いた。
やおら立ち上がり、自分のデスクに紙袋をポンと投げた哉汰はそのまま扉の方へと進んでいく。
「あっ…ちょっ…お前言ってるそばから!まさかあの二人のとこ行くんじゃ…」
「首突っ込むなって!おい!」
仲間たちも止めに掛かったが、哉汰は完全無視でVD部屋を出て行った。