わかれあげまん
柚は戸惑い視線を泳がせたが、それが哉汰からの助け舟だとすぐに気付き、
「あ。は、はい!そ、そうなんです!あたしこれから、この火傷の消毒に行かないと…」
つくろい笑顔を浮かべるのだけでも精一杯だったが、柚はそれでもなんとか左手の包帯を掲げてごまかし台詞をぶつけ、渡良瀬の腕を逃れて哉汰の方へトトトと駆け寄った。
むっ、と表情を曇らせた渡良瀬が、
「ふーん。…お前ら、どういう間柄?」
とまた威圧的に言って来た。
柚は俺のものなんだけど。とでも言いたげに強い眼光を哉汰へと注いだが。
「ただのバイト仲間ですけど。」
「そうなのか?柚」
不審げに尋ねる渡良瀬に柚は小刻みに頷いた。
「は、はい、…そうです。…ただのバイト仲間です!」
「…そか。じゃしょうがないな。柚。話はまた改めてな。」
「…」
渡良瀬は低く言い、歩き出した。
そしてすれ違いざまに挑戦的な目で哉汰を睨んだのがわかり、柚は身を竦めた。
ど、…
どうしよう…
もしかしてあたし、藤宮くんをいざこざに巻き込んじゃってる、かも。