わかれあげまん
見覚えのあるスラッとした長身の爽やか青年が、ニコニコしながらこっちに向かってくる。
「いたいた!ユ~ズちゃん!」
アワアワ口をさせながら柚と美也子は、無遠慮な渡良瀬を見上げていた。
「昨日はどうもな。……あれ、どした?酷い顔だな柚。二日酔い?」
「……あ。いえあのっ平気です」
ぐずぐずになった顔を慌てて手の甲で拭ってから必死に繕い笑いを返す柚に、呆れたように眉を顰める美也子。
興奮で上気した顔の渡良瀬は柚の両肩を掴んで揺すりながら言った。
「それより、聞いてくれよ!さっき教授から連絡入ってさ、オレ、博士課程合格してた~っ!」
「え……」
「信じらんねーよ!オレ単位ギリギリだったし、ありえねえと思ってたんだけどさ!?」
凍り付いた様に目を見開いたままの柚にかまわず、渡良瀬は彼女にそっと体を傾け耳打ちしてきた。
「これって絶対、お前のおかげ、だよな?」