わかれあげまん
美也子からも、同じような事何度も言われたっけ…
でも、…なんだろう。
この人の口から言われると、…
言葉の一つ一つが、あたしの心に張り付いた鉛の壁を乱暴に、だけど力強く引き剥がしてくれているような。…
そんなさわやかな心地よさを覚えて。…
でも。
とまた柚は眉間に深くしわを刻み下を向いて。
「…会ったばかりの藤宮くんに、あたしの気持ちなんて分かんない。」
と拗ねた子供のようにこぼした。
「…。」
と、突然哉汰がウィンカーを左に倒し、国道最左の側道へと車をそらした。
銀杏並木の歩道沿いにバンを停車させ、サイドブレーキを上げると。
静かに体を柚の方へと向けてきた。
「な、…何?急に…」
柚はおどおどと小さなリスのような怯えた瞳で哉汰を見上げた。
整然とした顔立ちの哉汰の凛とした瞳は、見つめる何者にもその視線をそらす事を許さない。