わかれあげまん
「野望って…; 」
「博士課程進めただけでもじゅうぶん柚ちゃんの御利益あったんだし、もういいんじゃなかったのか?」
渡良瀬は野心家めいたアグレッシブな視線を仲間に配ったあと、低い声で断言した。
「見てろよお前ら。俺は史上最短コースで教授になってやるから。」
「…きょ、教授!?VDの教授の座ねらってんの!?」
「ぶは!!ありえねぇ〜!!」
渡良瀬のあまりに陳腐で滑稽な野望の正体に、仲間たちは笑い転げた。
しかし渡良瀬は狡猾な笑みを浮かべながら、デスク上にあった紙くずをつかんで更に呟いた。
「笑いたきゃ笑えよ。俺はな、柚が噂通りの“使える女”だって身を持って知ったんだ。天辺登りつめるまで手放してたまるかよ。…でもって栄華を手にしたら、…」
ニヤリと口角を持ち上げた渡良瀬が、手にした紙屑をぐしゃりと潰し、部屋の隅のトラッシュボックスにポイと投げつけた。
「ってな具合に、派手に捨ててやるのさ。」
「お前、マジこぇぇ。」
「常軌を逸してるな。…」
ドン引きの仲間たちも意に返さず、渡良瀬は悪代官さながらに憎々しい笑いを禁じ得なかった。