ライフ・フロム・ゼロ
「……あ、」
10cmほどの高さの、イルカの置物が目に入った。
立ち上がり、手にとる。
うっすらと埃をかぶっていた
陶器製のそれを拭き上げて、
手のひらに乗せて見つめる。
それは、先程博之さんが言っていた
隣県の水族館に5年前売ってあったもの。
恭一が、はじめて買ってくれたモノだった。
「…もう、捨てなきゃなぁ」
呟いて、それでもなんとなくもとの場所に戻した。
優しい瞳をしたイルカの置物から
無理やり視線を外し、ベッドにもぐり込む。
買い物で歩きまわって疲れたからか、すぐに睡魔はやってきた。