ライフ・フロム・ゼロ

「……あ、」

10cmほどの高さの、イルカの置物が目に入った。

立ち上がり、手にとる。
うっすらと埃をかぶっていた
陶器製のそれを拭き上げて、
手のひらに乗せて見つめる。


それは、先程博之さんが言っていた
隣県の水族館に5年前売ってあったもの。

恭一が、はじめて買ってくれたモノだった。


「…もう、捨てなきゃなぁ」

呟いて、それでもなんとなくもとの場所に戻した。

優しい瞳をしたイルカの置物から
無理やり視線を外し、ベッドにもぐり込む。



買い物で歩きまわって疲れたからか、すぐに睡魔はやってきた。
< 37 / 182 >

この作品をシェア

pagetop