キミがいた夏~最後の約束~
橘先輩が優しく私の肩を掴んで先輩の広い胸に私を引き寄せる
「よかった…無事で…」
「…っ…ごめん…」
「夏じゃなかったら死んでる…」
橘先輩の悲しい声が響く
それと同時に体越しに橘先輩が少し震えているのを感じた
ごめんね…
心配ばかりかけて…
少しして橘先輩は私から体を離すと私の口元を優しく撫でた
「痛いか?」
私は首を横に振って大丈夫の意味を込めて笑ってみせたけど
少しも効果がなかったのは橘先輩の表情が変わらなかったことでよくわかる
「誰なの…?」
そして決心したように搾り出されたその言葉は昨日と同じ質問
昨日と違うのは、先輩の口調が幾分穏やかだということだけ
「階段から落ちて…」
「なんで嘘つくんだよ?」
橘先輩の真剣で…でも悲しそうな表情
私はその顔を見ていられなくて、瞳を反らしていた
「俺…そんなに頼りない?」
違う…
そうじゃない…けど…
「親父だろ?」
━━━━━━━!?
「親父に殴られてんだろ?」
私は下を向いてずっとずっと首を横に振り続けていた
「なんで隠すんだ!?」
違う…
「かばってんのか!?」
違う…
「お前をこんな風にした奴をかばうことなんか…」
「違う!!」