キミがいた夏~最後の約束~
橘先輩の立っているところまでゆっくり近づいて立ち止まる
「おかえり」
先輩の間の抜けた台詞に私は顔を少しほころばせたけど
先輩の顔は真剣で、私もまたすぐに真顔に戻ってその瞳を見つめた
何を言われるのか恐い…
でもその声を早く聞きたいなんて矛盾なことを考えて
「綾香ちゃんから、話し聞いた」
その言葉を聞いてすぐに後ろを振り替えったけれど
そこには綾香の姿はもうなかった
私は昨日、橘先輩から逃げるように走り去った時に誰かにすれ違ったことを思い出す
もしかしてあれは綾香…?
「お前が弟が死んだことに責任を感じてる理由もわかった」
前を向き直った時、先輩は私の手をやさしく握った
「いつも海を見つめてたこと…」
先輩の手…暖かいな…
「初めて声かけた時に質問された意味…」
先輩の声…心地いいな…
「なんとなくだけどわかった気がした…」
この手に抱き締められたどんな気持ちがするだろう?