空を見上げる皇帝ペンギン。

居たら悪いか、なんて意地悪なことを周防くんは言わない。


「今日、休みになったから。緋睡に会いに来た。」

そうなの、簡単に言うんだよ周防くんは。

片道四時間を一人で運転して、ここまで来るっていうのに。

ヒスイ、と久しぶりに呼ばれた音に心の奥が満たされる。


「これからの予定は?」


尋ねられて首を横に振る。大学の授業が休講になった一般庶民の私に、周防くんを前にして予定なんてあるわけが無い。


「どこか行かないか?」

「うん。」


頷いて、やっと立ち上がる。



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