私は一生、蛍を見ない
「わかりましたよ。美紅にフルボッコにされんのはこえーかんな。音速に挑む意気で行って来る」
ニカッと笑って、職員室に走って行った雷の後ろ姿を見送って、私は自転車置き場に向かった。
私が自転車置き場で自分のチャリの鍵を外したところで調度、雷が自転車置き場に走って来た。
「ふぃ〜、…頑張って走ったんだけど…フルボッコは勘弁していただけますでしょーか?」
「……ま、いーよ。それよかどこ行くんだ?」
本当に全速力で走ったのだろう、息があがっている雷にフルボッコ宣言を撤回してやり、行き先を尋ねる。
「ヒ☆ミ☆ツ行き先は着いてからのお楽しみ♪じゃ行くか!」
さっきまで息があがっていたのに早くも復活した雷が意気揚々と自分のチャリに乗る。
「着いて来いよー」
私を振り返り、そう言うとゆっくりと走り始めた。
私もそれに続く。
「と〜ちゃ〜く!」
10分程自転車を漕いで着いた場所は…ブランコがあり、滑り台があり、ジャングルジムがある………公園
「………公園…?」
「おうともさ!」
雷が私にいい笑顔を向ける。
…どうやら目的地を間違っているわけではなさそうだ。
「…なんだってまた公園なんぞに……」
「公園を馬鹿にするでないゾ!公園を笑う者、公園に泣く!」
「………」
公園に泣くって…どんな状況だ!?
「…で…?公園に来てどーすんだ?」
「公園ですることと言えば決まっとろう!もちろん、当然!公園でウハウハするのだ!!」
……………ナンダ、ウハウハって!!??
「なんだそのウハウハってのは!?」
「え?何をうすら寝ぼけたことを。公園でウハウハっつったら!幼稚園児のごとき童心にかえり!公園内の遊具をフル制覇しつつ!鬼ごっこ・隠れんぼ・缶蹴りなどの遊びを力の限りにやり尽くすんだ!!」
……………なんっっじゃそらーーー!!??
「変態的な高校生じゃねーか!!」
今時、本当の幼稚園児でさえ『遊びと言えば家でゲーム』だったり、そもそも塾だ習い事だと遊ぶこと自体が減っているため、公園も寂れているにも係わらず、高校生にもなって、『二人で楽しく、公園でお遊びをいたしましょ☆』………て阿呆か!?
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