新撰組のヒミツ 壱
光は迂闊だったのだ。


あの時を思い返し、斎藤に締めかけられた首を無意識にさする。自分の甘さと女の脆弱さを思い知らされた時だった。


「首……斎藤さんに何かされたん?」


山崎は、低い声音で尋ねてきた。


昔からの馴染みであるため、山崎が怒りを抑えている事が手に取るようにわかる。


「大丈夫。それに一さんは、何も報告しないと言っていたから――」

「阿呆か!」

荒い口調とは裏腹に、山崎は心配そうな表情で眉を寄せる。そして、指先でそっと首を撫でてきた。


「――傷はないな」

「だから大丈夫だ。逆に傷があったら“男”に箔が付くだろ?」


そう言った光はニヤリと笑う。山崎にしか見せない、勝ち気な珍しい笑みだ。


「…………」


歯痒そうな表情を浮かべる山崎だが、次第にため息をついて呆れた表情になる。


無論、光には女としての自覚はない。


「お前……意外に原田さんと気が合いそうやな」

「……私はあんな熱血漢じゃない」


原田を思い出して少し嫌そうな顔をする光。嫌いではなく、むしろ慕っているが、あの熱血ぶりは似たいと思わなかった。


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