ブラッディマリー
「……ここ……」
慌てる様子もなく、少女はゆっくりと身体を起こし、目の前に佇む和を再び見つめる。その目に、はっと意思が宿った。
「髪……!」
驚いて見開かれた瞳。
初対面の人間には当たり前にされる反応。またか、と思いながら和は息をついた。
「そんなに珍しいか? それよりあんた、大丈夫か」
言われて、少女はきょとんと和を見つめる。
「そういえば、私雨の中歩いてて……」
びしょ濡れのワンピースを見ながら、少女は小さく笑った。
「思い出した。街灯が眩しくて、目がチカチカして……」
「思い出したなら、帰ってくれるか? 店、閉めて帰らないと」
少女はようやくきょろきょろと見回し、ここがバーであることを把握したようだ。
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