ブラッディマリー
4

戻れない闇

 


『こんな母親だから──あなたまで、あの女に奪られてしまったのかも知れないわね』



 掠れた母親の声が、古い記憶の底から頭の内側を撫でる。


 赦せないのは、夫やその愛人、息子の愚行ではないのだと、今になってそう言っていたような気がして仕方がない。


 痩せた横顔が責めていたのは、母自身だったような──。





 ワックスで髪を固めながら、和は薬が切れてまた膨らみ出した痛みを疎ましく思った。


 雨の匂いで頭痛がして、その痛みは血生臭い光景を踏切のランプのように、脈と同じ速さで再生を繰り返す。


.
< 134 / 381 >

この作品をシェア

pagetop