ブラッディマリー
 

 するとそこに、自分の手についた血をうっとりと嘗め上げる万里亜の姿があった。その手に握られたままのナイフを見て、和は出血の為だけではない貧血を起こしそうになる。



 あれは、誰だ?



 瞳に映る万里亜の姿が、わずかに霞む。


 腰の傷に籠る熱は辛かったが、それでも意識を失うほどではない、とどこか冷静な思考が和に囁いた。


 その正体が何かなどということを確認する必要もなかったが、和は気休めに血濡れた自分の手を嘗め上げる。



 人間だったときのように鼻をつく生臭さ。単に鉄の味しかしないのは、自分の血だからなのだろう。



 自分の身体から流れ出す血を体内に戻そうとしたところで、それはいわゆる摂取ではない。万里亜の血はあんなにも馨しく、とろけるように甘美だというのに。

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