ブラッディマリー
いいや、自分自身の身体さえ、どうなるか判らない……そう思う程、血の記憶を刻み込んだどす黒い感情が和の中に渦巻いていた。
和と俊輔の間に挟まれた敬吾の手には、何の力もない。敬吾の腕を切り裂いて、更に俊輔に詰め寄ることは、今の和には造作もないことだった。
けれど、≪君子が浮かばれない≫という俊輔の言葉が頭の中でわんわんと響く。
聞いたところで母はもうこの世にいない、何が変わる、と叫んでやりたかった。
けれど、≪これがこの世界だ≫と信じてきたことを、この短期間でことごとく覆されて来た和の心は、実際疲れ切っていた。
ヴァンパイアのこともそうだけれど、自分自身の変化が一番信じられないのだから。
和に胸倉を掴まれたまま、俊輔は溜め息をついた。
その、普段揺らぐことのない冷静な瞳が、正面から和を見て後悔に揺れる。そして、和を気遣うように首を傾けると、俊輔は口を開いた。
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