ブラッディマリー
 

 俯いて、片手で顔を覆った俊輔の指の間から、一滴の雫がこぼれ落ちた。





「……逆らえるわけ、ないだろう、唯一惚れた女に、そんなことをねだられて……どんなに後悔すると判ってても、逆らえるわけ……」





 震えた俊輔の背にほんのわずか、時の無常が陰った。









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