ブラッディマリー
どうして今まで忘れてしまっていたんだろう。
あたしのお母さんは──百合亜という名前だったではないか。澄人兄さんとは、お母さんの違う兄妹だなんて、一体どこから──。
……ああ、兄さん自身がずっとあたしにそう言い聞かせてきたんだ。
お母さんは奔放な人だった。澄人兄さんとあたしの父親が違うことが、それを物語っている。
だけど、あたしの前でお母さんはそんな生臭い空気など微塵も見せなかった。それに、お父さんとは違うけれど、お母さんにはずっと恋人がいた。
それが、確かあたしの本当の父親。
お父さんは、お母さんが恋人を作っても文句を言わなかった。だってお母さんは直系で、純血のヴァンパイアだったから。
家長の座を与えてもらっただけで、お父さんには余りあるほどの名誉だった筈。
ただ、お母さんがいない時、家の中であたしとすれ違う時など、よく判らない言葉を何度も吐き捨ててきた。
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