ブラッディマリー
 

 そもそもあたしにはその言葉の意味が判らなかったから、もう思い出しようがない。お母さんのことを悪く言っているのが、何となく判ったくらいで。



 そんな緊張感がいっぱいの家の中で、澄人兄さんのお母さんへの執着は度を越して行った。多分、他に恋人のいるお母さんが許せなかったのだろう。


 澄人兄さんが、お父さんがあたしに吐き捨てるようなことをお母さんに言っているところを何度も見た。時には手を上げられてもいた。


 だからあたしは見ていられなくて、お母さんに言ったんだ。



 こんな家からは逃げ出してしまえばいい、って。



 恋人の──あたしの本当の父親のことを愛していたお母さんが、どうして澄人兄さんともずっと関係していたのか、今でも理由はよく判らない。


 だけど、家を出てしまえば、澄人兄さんと変なことしなくてもいいし、お母さんは泣かなくて済むようになる。

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