ブラッディマリー
 

 万里亜はそれを見て、信じられないという目をした。



 ──少し汚れたそれは、テディベアのカミーリア。



「澄人兄さん、なんで……」


「……お前が百合亜の部屋の前に落として行ったんだろう。百合亜がそのクマを持って行って泣いて喚くお前を宥めたが、近寄るなと何度も投げ付けられたそうだ。万里亜のお守りだから捨てるに捨てられないと、俺が預かっていた」


「覚えて、ない……」


「そうだろうな。兄さんと何をしていたんだと幼いお前に責められて、百合亜はしばらく部屋に身を隠していた。それ程凄まじい癇癪だったからな。すっかり泣き疲れたお前は何も覚えていなかった。クマをまた与えて思い出されても面倒だと、そのままにしていた。百合亜もお前も、哀れなものだな」


「あたし……お母さんのこと、責めたんだ……」


「万里亜……」



 澄人は少し距離を取ったまま、万里亜を覗き込むようにしゃがんだ。

.
< 354 / 381 >

この作品をシェア

pagetop