ブラッディマリー
和はチッ、と舌打ちをすると、俊輔に向かってわざと水たまりに革靴を突っ込んだ。
「わっ、冷て!」
跳ね上がった泥水は、見事に俊輔の足首まで汚した。
「いつまでもその姿とか、気味悪いんだよ。とっととくたばれ」
「和、お前、お父様に向かって何てことを」
「うるさい。俺の親父なんてこの世にはいない!」
和がきっぱりと言い切ると、俊輔は一瞬キョトンとして、くつくつと笑い出す。和は、そのまま電柱にもたれかかった俊輔を軽く睨んだ。
「何? ……うざいんだけど」
「……いや、話しそびれてたことがあってな。ここいらを離れる前に、お前に話しておこうと思って」
うっすらと空を覗かせながら、雲が流れて行く。
冷たい空気の中に、少しだけ太陽の光が降り注いだ。雨上がり独特の澄んだ空気で、俊輔は軽く深呼吸をした。
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