ブラッディマリー
 

 その可能性が怖くて死を望んだのだとしたら、どうしようもなく女な母親だったのだな、と思った。それがおかしくて仕方がなかった。


 母のことを考えると頭痛が止まらなくなって、その度憂鬱な気分になっていたのに。


 はぁ、と溜め息をついて、和は踵を返す。



「また来るよ。またな、万里亜、母さん」



 湿った芝を踏みしめて、和は墓を後にした。



「よう」



 和が駅に向かって歩き出すと、タイミングを窺っていたのか、俊輔が電柱の陰から現れた。


 和は別に、この軽くてどうしようもない純血ヴァンパイアの唯一の生き残りを、父親と認める気はなかった。



 こいつが腹を決めて黒澤に残ってくれれば、自分は最初からヴァンパイアとして生まれて来ただろうし、正式な形で万里亜を嫁に貰えたかもしれない、とある時頭に過ぎったからだった。



 俊輔の顔を見るとどうにもその『もしも』話が思い出されて、腹が立ってくる。


 矛先が変わっただけで、父親に対しての複雑な感情というものとは、一生付き合わなければならないらしい。

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