ブラッディマリー
「おはよう、俊さん」
俊輔は店内をきょろきょろと見回すと、「万里亜ちゃんは?」と和に視線を戻した。
和がその問いの答えとして黙ってトイレを指すと、俊輔は大袈裟にははぁんと頷く。
和はロッカーを閉めると、有線のスイッチを入れた。
営業中よりボリュームを落として、最新J-POPのチャンネルにすると、よく聞く男性ボーカルの声が流れ出す。
「営業5分前になったら、いつものチャンネルにするからなー」
「うん」
俊輔と交代するようにカウンターから出た和は、そのまま隅の席に座った。
すると、重々しく奥のトイレのドアが開く。
万里亜は中からドアを少し開いたきり、そのまま出て来る様子がない。
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