戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
スプリッツァーから白ワインへ酒類を変えてのディナーは、いつしか話題もファッションや互いの友人の話へ移行していた。
「ところで怜葉、カタツムリの美容液って使ったことある?」
「ええ何ソレ?」
「友達に聞いたんだけど、カタツムリのエキスでお肌が若返るみたいよ。
ほら、美白や乾燥どころか、アンチエイジングも気にしたい年頃だし」
「我が儘すぎ…!」
「美容は常に貪欲じゃないと」
「アハハッ、」
たとえ可笑しくない話でも、そこはアルコール・マジックとでも言うのだろうか。
何を聞いても楽しめるのが心地よいもの。もちろん私と由梨が酔っても饒舌に変わるだけで、人様に迷惑を掛ける性質ではないのも理由。
そのお伴として注文した、シャルドネの白ワインがとても美味しく、互いのグラスへ順々に注いでは消化していた。
フルーティでいて柔らかいその口当たりは、冷えているとさらに清涼感を増すからおかわりを誘って止まない。
ワイン通でも何でもなく、むしろコンビニに売っているワインを美味しく味わえる私でも。
こうしてお洒落に楽しめば白ワインはやっぱり、フランス産が好きだなと思ってしまう単純さだ。
先日に専務と訪れたイタリアンのお店やパーティーでの会食など…、そのすべてと大違いのリラックス・ムードが心を宥めてくれる。
専務と過ごすのは緊張ばかりを強いられ、真っ黒な瞳に射抜かれるのも息苦しくて堪らなかったのは本音。
紛れもない愛情で苛まれていたからでも…、彼を好きと自覚するための時間であったと今なら思える。