戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


果たして、この世のどこに“貴方には嘘を吐かない”と言われて、希望を抱かない女が居るかしら…?



そう安易に物事を考えて元彼には騙されたうえ、ロボット男にも都合の良い女に扱われているというのに…。


本当に学習をしなければと自身の行いを省みるばかり。幸せそうな由梨を前にすると、過去と取り去れない現在の想いが渦を巻く。


彼女の穏やかな恋愛話を聞いては羨ましく感じるからこそ、もう戻れない日常を追い求めてしまう…。



時おり女子会を催したり、別の男性と普通に恋愛を楽しめられたら――無意味な仮定が浮かぶ理由は。


専務のことを早く諦めなければならない、と心が一番分かっているせいだろう…。




「あー、美味しかった!」

「うん、久々に良く飲んだねぇ」

「怜葉のピッチは速すぎるけどぉ」

「そう言う由梨こそ、水みたいに飲み干すよね」

「ポリフェノールは美容に良いの!」

「きっと将来、肝臓は大変かもね」

「ふふっ、それは否定できない」


閑静な住宅街の中にある、お洒落な欧風料理店を大満足であとにした私たち。奥まった路地から大通りを目指し2人並んで歩いて行く。


ほろ酔い気分で街を歩くのは気持ち良いもの。どうやらそれは隣を上機嫌で歩く由梨も同じなよう。


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