十五の詩
(あ……)
──指輪をなくしたことに気づいたのは、就寝前に着替えている時だった。
寮の門限の時間はとうに過ぎてしまっている。
着替えの手がとまっているユニスに、ヴィンセントが「どうした?」と聞く。
不安を隠して、ユニスは何でもないと答えた。
窓の外の月を見て、ここから探しに行けるのならという考えが掠めていった。でもそれはすぐに打ち消された。
生徒総長であるヴィンセントに迷惑をかけるわけには行かない。
明日の朝、歩いたところをたどってみよう。
言い聞かせたが、その夜はなかなか寝つけなかった。過去と今と──閉ざしていた感情が一気に吹き荒れて苛んだ。
*
午前3時を回った頃、かすかな物音にヴィンセントは目を覚ました。
(何だ?)
いつもの寮の部屋だ。でも何かが違う。部屋の明かりではなく、まったく別の次元の明かりが部屋にともっているようだ。
身を起こし、ベッドサイドに外しておいていた眼鏡をかけると、ヴィンセントはそれまでに見たことのないものを見た。
ユニスが眠っているベッドのふちに幻想的な容姿の少女が座っているのだ。
少女はユニスの額に手をのべていた。具合がわるいのだろうか?
少女は気配に気づき、ヴィンセントを見た。
「驚かれませんよう。マスターがお召しになりましたので」
人の声とは思えない響きの声が、しんと部屋に広がった。
何処かユニスに似た面差し──ヴィンセントは変な気分になりかけた。俺は夢でも見ているんだろうか?
察したのか、少女が微笑みかけてきた。
「私はユリエと申します。ユニス様をマスターとしてお仕えしている精霊です」