十五の詩
朝になってもユニスの体調が良くはなさそうだったため、ヴィンセントはユニスに休むように言ってひとりで登校した。
教室に入るとレナートが目敏く見つけて、寄ってくる。
「おはよう。──あれ、ユーニーは?」
「今日は休み。というより休ませた」
「なにー!?」
「何だ?ユニスに何かあるのか?」
「解けない問題があったから」
「──どの問題?」
「あー…えー…」
「まさか全部とは言わないだろうな?」
「全部じゃないけど…。はうー…だから鬼寮長に聴くのやなんだ…」
「何言っているんだ。わからないお前がわるい」
「しくしくしくしく」
「鬱陶しい。何歳だ」
バシ、とレナートにノートを押しつける。
「早く写せ」
「はうん。今日はどうしたの、ヴィンセント?カッコイイー」
「カッコイイの安売りするな。黙って書け」
レナートは急いで書き始めた。──ふと、ちらりとヴィンセントを横目で見ると、いつになく何か考え込んでいるような表情が気になった。
「元気ないねー、ヴィンセント」
「……。そうか?」
「うん。ユーニーそんなに具合わるいの?」
「どちらかというと体調より精神面だな。…まずいな。ユニスと話していると優しくなってダメだ」
「適度に優しいのはいいことじゃないの?ヴィンセント、ユーニーがルームメイトになってから、前より柔らかくなったもん」
「そんなに鬼みたいだったか?」
「うーん…。鬼にでもなりきっていないとヴィンセントでいられないみたいな感じはしたね」
ヴィンセントはレナートの何気ない指摘に、そう見ていたのかとレナートを凝視してしまう。
レナートは書く手は休めずに穏やかに問う。
「何?俺のヴィンセント評なにか間違ってる?」
「いや、あっているかもしれない」
「でしょ?ユーニーは大事にしなさいよー。ちょっとあのレベルまで達している癒し系はなかなかないよー」