十五の詩
ノールからの手紙は嬉しいことも綴られていたが、許婚者の問題についてのことが書かれていた。
ヴィンセントはそういう問題で苦労してきているだろうと思い、話してみたが「俺の場合は選択権はなかったからな」という返答だった。
「顔も知らないのに、血縁関係と家の都合だけであれこれ決めないといけない立場もキツイな」
イレーネの苦労を見てきてその科白を言っているのだろうヴィンセントの言葉は、ユニスには現実味を帯びていた。
(イレーネはどうするのだろう)
迷っても時間はとめられない。でもこんなことをイレーネに聞けるのか?
「ユーニー。また考え事?」
ぽんっと頭に手を乗せられた。
「難しく考えないで、また新しい恋を初めたらユーニーの毎日が楽しくなるかもよ?」
「──そうですね」
ユニスはレナートの言葉に前を見据えるように言った。
「イレーネ・スフィルウィングに恋でもしたら、世界が変わるかもしれません」
「え」
レナートが止まる。ニコルも止まる。ヴィンセントですら止まってしまっている。
「ちょ、ちょっとユーニー?どしたの…?」
おろおろするレナートにユニスは決然とした表情で言った。
「イレーネ・スフィルウィングに恋が出来たら素敵だと思ったんです。でもそう言葉にしている時点で恋をしているのかもしれない」
「え…。えーーーーー!?」
レナートの絶叫が響き渡り、ヴィンセントが苦笑した。
「おい、ユニス。仮に俺がイレーネ嬢を好きだとしても、お前は俺に挑戦する気か?」
「受けて立ちます」
こいつ、とヴィンセントに殴る真似をされた。ニコルが笑っている。
「あはは。面白え。どうせなら派手にやれー」
とめられない時間なら、気持ちもとめていけない理由はない。
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