十五の詩
翌日、ヴィンセントと一緒に登校してきたユニスは後ろからレナートに抱きつかれた。
「ユーニー!!」
「レ、レナート」
勢いによろけながらユニスは笑顔になる。ユニスにこういう体当たりを食らわせるのがレナートは好きなのだ。
「昨日は一度も会わなかったねー。淋しかったよー」
言いながらユニスにじゃれついている。ヴィンセントは煩そうに言った。
「ユニス、それ、鬱陶しくないのか?毎回毎回…」
「スキンシップ、ですよね?」
「ユーニーわかってるー。そーそー。スキンシップ。…あ」
そこで目の前を歩く騎士服の少女の姿に気づき、三人は目を止める。
「イレーネだ」
レナートがぱっとユニスから手を離す。イレーネも気づき、三人を見た。
「おはよう。元気だね」
会話が聞こえていたらしい。笑っている。
レナートは赤くなり「はいっ!元気です!」と返事をしている。
ヴィンセントが小声で「……バカ」と呟いた。
*
「あれ?いい匂いがしないか?」
剣術の授業が終わって着替えている時に、ニコルが鼻をくんとさせた。
レナートがほわーんとした表情で言う。
「そだねー。お昼はカレーライスがいいなー」
「いや、そうじゃなく…。ユニス?」
大きな身体のニコルがユニスを見下ろした。ユニスは練習着をたたみながら答える。
「はい。香水を…。変ですか?」
「香水?あらま。ユーニーどしたの?急に」
ノールが送ってきた小瓶が香水だったのだ。
リオピアにしか咲かない一種類の花の成分だけを使ったシングルフローラルである。
気分を良くする作用があるのと、故郷から離れているユニスを気遣ってのものだったのだが──。
「ユーニーが色気に目覚めちゃったらエライことになるねぇ」
「いや、ユニスは黙っててもこれから伸びるし、素養はあると思うが」
周囲の反応はこれだ。
故郷からのものだと知っているヴィンセントは、放っておけ、とユニスに言った。