十五の詩
「し、失礼を致しました。しばしお待ちを…」
言づてのためひとりが門の向こうに姿を消し、やがて王宮の中から、男が目通りを願った人物が姿を見せた。
「ノール様、この者です」
「おお。ノール様」
「──イアン殿…?」
イアン・ガレットが満面の笑みを浮かべた。
「ご立派になられたな。王子といい、ノール様といい」
ノールはかつての大戦以来の再会であるその人物に思わず気が緩んで泣きそうになった。
「おいおい、こんなところまで王子に似なくてもいいんじゃないのか…?」
「イアン殿…」
再会を喜び、ノールとイアンはかたく抱き合った。
「──どうぞ」
ノールがイアンの前に淹れたて珈琲を差し出した。
イアンは苦笑する。
「何だ。お前さんはその身分になってもこういうことをしてるのか」
ノールが笑みを返す。
「もてなすことは好きなのです。仕える者としての立場が長かったこともありますし、ユニス様がご不在の間だけとはいえ、一国を仕切らねばならぬという立場には未だに慣れません」
「そうか」
珈琲を一口すすり、ノールの顔を改めて見る。
「こうして見ていると、お前さんと王子は本当に実の兄弟のようだな。王子に会ったが、血が繋がっていないのが不思議なくらいだ」
「ふふ。本当ですか?」
「ああ」
「ユニス様はお元気そうでしたか?」
「そうだな。魔力がまだ安定していないから体調を崩しやすいとは言っていたが──俺が会った時は顔色は良かった。しかし…王子の体調まで感知している輩がいるのはあまりいい傾向ではないな」
「ユニス様を襲った者たちの事ですね。何かわかったことが?」