十五の詩



 それまで明るかったイアンの表情が、急にかたくなる。

「──襲った輩は一見したところはならず者。だが、薬を使ったらしい」

「薬…」

 ノールの表情にも険しい色が走る。

「それは…かなり大きな組織が裏で動いているのでもなければ」

「その時のリーダー格の男の名はわかった。レガというらしい。その世界では腕の立つ男として渡り歩いていると聞いた。王子の感覚では使った薬はフォーヌのものだろうと」

「フォーヌの?」

 フォーヌは先の大戦で、ノールが落ち延びることとなった国である。

 王都が陥落するかもしれぬという空気を察知したユリウスは、ユニスに似た容姿のノールを使い、ユニスを逃がしたように見せかける作戦に出る。

 ノールと共にフォーヌへと逃れさせた魔導士たちはわずか数名であったが、特殊能力に秀でる精鋭の者たちだった。

 ノールたちの部隊はフォーヌからの攻勢をうまく攪乱し、その間にユニスをアレクメスへと逃れさせることが出来たのである。

その攪乱作戦の最中、ノールを苦しめたフォーヌ勢の魔導士が1人いた。

 ノールはユニスほどではないが、かなり高い魔法能力を持っており、ノールにひけをとらぬ相手というのは滅多にない。

 フォーヌの薬と聞いてノールが不安を覚えたのはそのことだった。過去に戦いを交えたフォーヌの魔導士と関係があるのかと。

「薬を使うのならアレクメスのものでも…。まさか」

「どうかしたか?フォーヌとアレクメスの薬では何か違いがあるのか?」

「薬はその国の魔導士の質がわかるものでもあります。外部へ差し出すということは内部事情──つまり、どれくらいの力量の人材を有しているのかということを相手方に知られるということ。そう簡単には取り引きは行われない。あったとしてもかなり高額での取り引きとなるはず」

「何だそれは。アレクメスでは入手しにくいフォーヌの薬をわざわざ手に入れ、王子を襲ったということか?わけがわからん。一体どういうことだ?」



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