美しいあの人

彼が喜ぶなら

あたしの日常は大きな変化を遂げた。
あたしが祐治のために書いたものは、本として出版されることが決まった。
作家の名前は「西条祐治」。
文章を書くのはあたしだけれど、
それは祐治が書いたことになり、
インタビューを受けたりするのは祐治の役目。
あたしは祐治の小人さんであり続けることで、
西条祐治という作家ユニットの執筆担当となった。
祐治は広報的なタレント、芙美子さんはスタイリスト兼マネージメント。
もちろん、祐治は書いているのも自分だと思っている。
あたしの書いたものを消化してまるで自分が一字一句書いたように話せる祐治は見事だった。
本が書店に並ぶまでにあたし達がするべきことはたくさんあった。
松井さんから命ぜられて、二ヶ月かけて書き直しをした。
出版が決まって喜んでいる祐治にあたしが書いている姿を見せるわけにはいかなかったので、
原稿を書いている間はワシントンホテルに軟禁された。
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