美しいあの人

松井さんは周到だった。
祐治にも出版のために書き直しをしている夢を見させるため、彼の部屋も取った。
祐治は大喜びで、あたしに向かってこういった。
「しばらく執筆のためにホテル暮らしになりました。
新宿だし、エリはお仕事が終わったら私が泊まっている部屋に来るといいです。
そうしたら家にいるのとあまり変わらないし、私もエリの顔を見れば原稿が良く進みます」
「編集さんはそれでいいって言ってくれたの?」
「はい。エリがいないと書けないというのは、松井さんもわかってくれていますから」
そりゃあそうでしょうとも。
祐治、本当はあたしがあなたよりも上のフロアで原稿を書いているのよ。
あなたのためにね。
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