美しいあの人
更衣室に入ると、他の女の子達も着替えていた。
あたしはピンクのドレスを脱いでロッカーから着替えを取り出す。
ストラップレスにしていたブラジャーにストラップを取り付けていると、
最後にテーブルが一緒だった香織が声をかけてきた。
「エリちゃん今日松井さんとどこいくのー?」
アフターに誘われたのを見ていたのだろう。
香織の期待しているような答えは残念ながら出せないので、
お気に入りのゼブラ柄のシャツのボタンをとめながらぞんざいに答える。
「ゴールデン街」
案の定、香織が残念そうな顔を見せた。
「ゴールデン街ぃ? しみったれてんね」
しみったれてて結構。
「ごめんねー。焼き肉とかだったら一緒に連れていけたんだけどねえ」
あたしは好きで行くのだが、一応つきあいというものもあるのですなまなそうな顔をしておく。
好きでゴールデン街に行くのを知られて「エリちゃんはなんか変」みたいに他のホステスの噂になるのも面倒だ。
じゃあお先ね、また明日ね、とショルダーバッグを肩にひっかけて更衣室を出た。

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