Nocturne
それでも、
努力をして、1位をとれない人もいるんだから。
努力をして1位を取れること。
それでも天才なんじゃないの?
『お前に何が―――』
『わからない。わからないよ、ずっと。多分、一生。
だってあなたみたいに私はお金持ちのお坊ちゃんじゃないもの。
一般家庭の普通の人間だから』
『なら、黙っとけよ』
『だけど私は、いくら努力をしても1位にはなれない。
だって、私よりももっと努力をしているあなたがいるから』
『…そういやお前、2位だったな…』
『そうだよ、私は2位。努力をしても、2位なの』
『…』
『努力をしての1位がなんだって言うの?
天才なんて、この世には存在しないよ。
天才はみんな、誰よりも陰で努力してるの。
天才だって言われることの何が嫌なの』
『…』
『大切なのは家柄じゃない。
その人がどれだけの中身を持っているかで“人”は決まるの。
家柄なんてオマケよ、オマケ!あのキャラメルの上についてるオマケなの!』
『…例えが滅茶苦茶だし』
呆れた様な反応だったけれども、彼はすっきりしたような笑みを浮かべていた。
そこからだったかな。
仲良く喋り出したのは。
教室から抜け出すこともなくなって、クラスメートとの蟠【わだかま】りもなくなって。
そして、付き合いだしたの。