Nocturne
『いいんだよ、担任もクラスメートも俺を特別視するし、いい加減ウザいんだよ。
お前こそ、早く戻らねぇと遅刻になるぞ』
『…何で特別視って分かるの?』
『アイツ等は、いつだって俺の家柄や名声、順位で何でも決めつけやがるからな』
怒りと悔しそうな彼の声が聞こえた。
その証拠に彼の手の拳は強く握られていた。
痛々しいくらいに握られた彼の手からは、血が滲み出ていた。
『どうせ、努力して取った1位でも、さも当たり前かのように「天才ね」とかって言いやがるんだ』
私にはわからなかった。
彼が、そう思う理由が。
だって、
『じゃあ、どうしてそこを気にするの?』
気にする必要が、どこにあると言うのか。
私には理解できなかったんだ。
『…は?』
『気にしなければ良いじゃない。
自分は“努力をしてからの”天才なんだと、そう言えばいいじゃない』