聴こえる
9.生徒会の朝
「…なおくん、寝不足なの?」
俺の耳に響く会長の声。
あまりの近さに不覚にも少しびびってしまった。
「近ぇよ」
「なおくん、俺一応先輩」
「知ってる」
「……ま、いいけどね」
会長はニコっと笑うと自分の席についた。
一ノ宮千秋。
私立蓉帝学園理事長の息子であり、一ノ宮財閥の跡取り息子でもあるこの男は俺の嫌いな人種だ。
「なおくん寝てない感じ?」
「…うるせぇな。」
寝てないのは事実だった。昨日のアナウンスが頭の中を支配して寝付けなかった。
頭から追い払うように、俺は会長に押し付けられた書類に目を通す。
「ねえねえ、なおくん」
「うっせぇなさっきから何なんだよしつけーよ」
「ん、暇なんだけど〜」
「仕事しやがれバカい長が!!」
つい、バカにキレてしまった。
すると会長は眉毛をハの字に曲げた。
「ヤダなぁなおくんまであの放送野郎と同じ呼び方するなんて」
「…!」
放送、という単語に反応してしまった。ずっと気になっていたのだ。
「会長、放送部は人数増えたんすか」
「…え、そうなの?知らないんだけど。てゆうかさ、スポーツ科の1年にめちゃ可愛い子いるの知ってる?体操部でさぁ〜」
「……興味ねぇよ」
会長も知らないあの声の主。入部したばかりなのだろうか。今日も昼休みに普通科に行ってみるか。
「会長、俺昼休み用事あるから畠中に仕事回してくれ」
会長が仕事をしない前提で、俺は1年会計兼書記の畠中静を名指しした。畠中は真面目だから大丈夫だろう。
あの声をもう一度聞きたかった。
「珍しいね。どうしたの?女の子絡み?え?この色男が」
コノコノ〜と無駄絡みをする会長に若干殺意を覚えながらも、俺はデスクに視線を戻した。
9.生徒会の朝