大海の一滴

「かわいそうに。女の子が海で溺れたらしいわ」
 丸い老眼鏡をかけ、地方欄のニュースにおばあちゃんが顔をしかめる。

「あらまあ、すぐそこの海岸じゃないか。昨日は随分波が荒れてたからね」
 可哀想に。とおばあちゃんが呟く。

「身元不明だって。こんなに小さな町でもすぐには分からないもんなんだねぇ。青いワンピースを着た十~十二歳くらいの女の子だって」


 え?



「ちょっと、それ見せて」
 それは、本当に小さな記事だった。




 二十日午後十時半頃、海岸で倒れている女の子を水質調査に来ていた~私立~大学の準教授と学生らが発見し、110番通報した。
 ○署によると、女の子の年齢は十~十二歳くらい、身長百四十センチ前後で青いワンピースを着用していた。
 着衣の乱れや不審な傷が無い事から、溺れた可能性が高いと見ている。

 同日は、昼過ぎから夕方にかけて一部雷を伴う大雨が降っており、海岸沿いには高波が押し寄せていた。
 ○署では、女の子の身元特定を急ぐと共に真相究明に努める。






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