大海の一滴
「ええ~」
「マジかよ」
ひそひそ、ざわざわ。
「まずは自分の机の中とロッカーを探して下さい。それが終わったら、机の上に椅子を上げて手前に寄せて行って下さい。ありそうだと思う所をくまなく探して下さいね」
がさごそ、がちゃがちゃ。
かおりちゃんだけは、相変わらず動かない。
ズズー、ズズズ。
「何か、宝探しみたいだね」
愛美ちゃんに近づいたヒロ君が、嬉しそうにこそっと言った。
「先生、なんか今日変じゃない?」
私の耳元で、アヤネちゃんが眉をひそめてこそっと言った。
「冗談じゃねーよ、あいつのせいでせっかくの体育が終わっちまう」
「あんま、先生にチクんないで欲しいよな」
男子の誰かと誰かがひそひそ言った。
「あんたたちさ~」
言いかけたのは、アリサちゃん。
がっしゃ~ん。
その時、机の上の椅子の何個かが、勢いよく倒れた。
「誰だ、今言った奴! 言いたいことがあんなら堂々と言えや」
これはもちろん、タケシ君。
「せんせ~い。ありましたぁ」
くすくす笑いながら手を上げたのは、
渡辺さんと愉快な仲間達だった。