ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
「あんな映像撮る人はネクタイなんかしないよ。」
ミツは黙った。
なんと言うべきか、確かにネクタイを何本も必要とする予定はこの先ない。
ありそうにない。

「いつか、するかもしれないよ。」
なんだかミツは自分がなんとかレミの用意した誕生日プレゼントを
もらおうとしているようで滑稽だな、と思った。
「いつ?」
レミは問い返した。
「三年後とか、五年後とか・・・。」
ミツはしどろもどろ答える。
「十年後とか?そんなの嫌。そんなのおしゃれじゃない。」
「どんな柄選んだんだよ・・・。」

「ミツ、先生が呼んでたぞ。」
級友の一人がミツを呼び止めた。
「あ?なんだろ。」
少し離れたレミを気にしながら、ミツは返事を返す。
「選抜上映会のテープ取りに来てないって。」
「ああ、あれか。わかった、サンキュ。」
「じゃあ、おれら先行ってるぞ。」
「うん。後から行く。」
ミツは手をふってレミへ向き直った。
「私も行かなきゃ。」
「うん・・・。」
ミツは頭をかいた。
最後かもしれないのに、レミとはしっくり会話ができない。

「ミツを縛るんだったら嫌なんだけど、時々会いたい。」
「え・・・。」
思いもよらない言葉にミツは言葉に詰まった。
「電話でもいい。」
「どうして?」
どうして、と聞いて、
なんていう無神経でセンスのない返事をしたんだろうと
ミツは悔やんで唇を噛んだ。

「確認したいの。」
「はぁ・・・。」
「もう大丈夫かなって。」
「はぁ・・・。」
ミツにはレミの言わんとすることがよくわからず、
曖昧にわかっちょうなふりをして濁した。

「じゃあね。」
と言って、レミが友達の元へ小走りに駆けていく。
アップにした髪に挿した髪飾りが揺れている。
新しいような古いような不思議な匂いがまだミツのまわりに漂っている。
「へえっくしょん。」
ミツは大きなくしゃみを一つして、校舎へ入った。
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