メロンパンにさようなら
そんな気持ちを知ってか知らずか、隣で、


「いいの?放っといて」

なんて楽しそうに愛が言うから、ぐっと愛を睨み付けながら歩いていると、後ろから彼がついてくる足音が聞こえた。



「なぁ」

「……」

「お〜い。メロンって何部?」



後ろから声をかけられても答えず、振り向きもせず歩いていると、隣の愛が痺れを切らしたのか、


「天文部なんです」

と、代わりに答えていた。

「ちょっと、なんで答えてんのよ」

「だって、可哀想でしょ」

「可哀想なんかじゃないしね」

「いつも気にしてたのは、どこのどちらさんでしたっけ?」

「気にしてなんてないしね。会わなくなって清々してたしね」


そうだよ。
気にしてたのは、これまでこんな変な人に会ったことなんてなかったから、印象が強烈だっただけなんだから。

それ以上の気持ちなんてないんだからね。


そう自分に言い聞かす。


「天文部ね」

ぽつりと高見翔が呟いた声が聞こえたような気がしたけれど、後ろをついてくる彼を気にしながら、部室である地学室へと来ると、何故か、高見翔も地学室に入ってきた。


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