運命のヒト
ゴォン……と、またひとつ鐘が鳴り、彼がベンチから降りた。
ゴォン……そして、まっすぐこちらへ近づいてくる。
あたしも沢村さんも、突然のことに驚いて動けなかった。
街灯が彼の姿をハッキリと闇に浮かび上がらせる。
息を呑むほど端正な顔だち。
ふんわりと眉にかかる柔らかそうな前髪の下には、どこか寂しげで、だけど甘い瞳。
その目は何か思いつめたようにあたしだけを映している。
形のいい唇はなにか言いたげに薄く開いているけれど、言葉は出ず、白い息を吐き出すだけ。
長い二本の脚は、吸い寄せられるようにあたしへと確実に向っていた。
……なんで、近づいてくるの?
あたし、こんな人、知らない――。