運命のヒト
誰かいるのかと辺りを見回すけど、あたしと沢村さんしかいない。
と、そのとき。
噴水のかげになっていた、時計台の手前のベンチの上に、ぴょこん、と小さな頭が現れた。
「あっ」
こんどはハッキリ聞こえた声。
というより、ベンチのその人はおそらくあたしを見て「あっ」と叫んだのだ。
街灯がわずかにあたっておぼろげに見えるその顔が、確かにこちらを向いている。
……な、何?
ていうか、あの男の人、まさかベンチで寝てたわけ?
正気? 今、12月だよ?
「――美園」
名前を呼ばれた。
まるで何年も、そして何百回も呼び続けてきたような声で。