運命のヒト

「……うん」

あたしはほとんど消えかけの声で答えた。


「眠い?」

「ん……」


「おやすみ、美園。
……誕生日おめでとう」


そして、眠りに吸いこまれていく中で――

あたしは唇に、たしかな温もりを感じたんだ。



 * * *



あれは夢だったんだろうか。

翌朝、少し体調が回復して目覚めたあたしは、昨夜の記憶を掘り返しながら、むくっと体を起こした。
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